『シモーヌ』
アンドリュー・ニコル監督のSFコメディ映画。
最新作『TIME』は当ブログの初記事にしたいくらいの傑作です。
この映画では、なんと「現実と区別がつかないほどのバーチャル女優(ヴァクトレス)を作成できる」プログラムが登場。
主人公の無名映画監督は、このプログラムにより架空の女優シモーヌを作り出し、長編映画を完成させ大ブレイク。
正体不明の美人女優シモーヌはマスコミや世間からも大注目を浴びるのだが、実在しないためプライベートが存在しない。
主人公は映画が大成功したのをいいことに、シモーヌは専属女優とし匿っているという嘘を吐いてしまう……。
最近では『ロボジー』などでも使われた展開である、「嘘のせいで後戻りできないところまで追い込まれてしまう」系の作品。
『シモーヌ』の面白いところは、主人公がシモーヌが実在すると人々に信じ込ませるために様々な手段を用いるところ。バレたらただじゃ済まないため、主人公の行動力も半端ない。
ホテルに宿泊した風に見せかけたり(勿論主人公と二人部屋の設定)、次回作の共演者と音声だけで会話させたり(勿論主人公のアテレコ)、テレビに映像で出演させたり(勿論主人公が予め作っておいたプログラム)などなど。
更には「監督の言うとおりにすれば素晴らしい作品になるわ」「役者は監督のためだけに動けばいいの」など主人公が訴えたいことをシモーヌに代弁させたりもする。このあたりが、設定を上手く活かしているポイント。
とにかく前半は主人公がシモーヌのアリバイ工作のために悪戦苦闘する展開が笑える。
しかし、中盤からはどことなくシリアスな雰囲気が漂い始める。主人公が、自分の取る行動と意志の矛盾に気がついたとき、一体シモーヌとの関係どうなってしまうのか――。
設定にこそリアリティは皆無だし、その技術はもっと別のところで活かせよとでも言いたくなるが、話はすこぶる面白いのでオススメ。
ラストの展開は連続した伏線の回収によって二転三転(!?)。
主人公は「実在しているように見せかけた」という嘘に、どう決着をつけるのか?
『七つまでは神のうち』
あらすじを紹介するのが結構めんどくさいホラー映画なんで、予告編で……;
意図的に犯人の顔が見えないような構図になっているのだが、そのせいで逆に観てる途中で犯人に目星がついてしまった。
すると、映画の構成におけるトリックも自然と見えてきてしまい、結果オチが想像通りに……。これさえわからなければきっと楽しく観れたんだろうなあ。
娘が行方不明になった夫婦、そして三人の若い女性(少女?)、彼女達の接点とは? そして神隠しの真相とは?
トリックは使い古されてるし、観てる途中で気づいたとしても中々面白い。
だけども、キャラクターの行動や様々な手段に疑問が残る。
「何故ここでそんな行動を取る?」「どうしてこうしないの?」「それって運に左右されすぎじゃない?」
と、観てる間に何度もそう思ってしまう。なんというか、話を進めるためだけに登場人物を動かしているようでイマイチ物語に乗れない。
それに後半、三人の女性にふりかかる悲劇は、どうも確実性に欠ける。そんな一か八かでいいのか?
というわけで、最後までキャラクターへの感情移入ができず、面白い話なのに引き込まれない展開の仕方などのマイナス面が目立つ。
全体的に、説明不足なのだ。劇中では登場人物の何人かが誘拐されるのだが、その方法については最後まで明かされない。あの妙な演出はなんだったんだよ!と言いたくなる。
設定や構成を、上手く料理できていない凡作ホラー。前述のシモーヌは、設定を物語と絡めた上手い使い方をしているのだが。
では、最後の『エグザム』は続きをぽちっと。
どちらかというと、一番書きたかったのは『エグザム』についてです笑
注:予告編の前に広告が出るのでスキップしちゃってください。
就活だ。
映画の舞台は、とある企業の就職試験の会場。最終試験まで残った8人の男女に用意されたのは、一つの入り口しかなく、窓もない密室。受験者以外には、警備員が一人。
この映画は、いわゆるワンシチュエーション系スリラーであり、ミステリー映画だ。
物語は、最初から最後までずっと部屋の中で進行する。
8人の男女が、上映時間をフルに使って何をするのかというと(予告編を観ればわかるのだが)問題を探すことだ。
配られた紙は、表面に受験番号が書いてある以外には何も記載がない。
試験官は「質問は1つ、求められる答も1つ」「試験時間は80分」「いかなる理由があっても、自分の紙を損なえば失格」「退場を選んだり警備員や監視カメラに話しかけても失格」
とだけ説明して去ってしまっている。
さて、ここから8人の受験者達が、その質問を見つけ出そうと悪戦苦闘。ルールの裏をかいて時に協力し、時に潰し合う受験者達は、いずれも頭の切れる者達ばかり。
密室系の映画では必須とされる「観ている側の考えそうなアイデア」の実践や「観ている側の考えもしなかった秀逸なアイデア」の見せ方も上手い。
それだけではなく、8人の中にはどうやら「企業側の人間」が紛れ込んでいるとか、観客には明かされていない映画の「世界観」「企業の正体」など複数の謎を絡めた、極めてエンタメ性に富んだ密室劇だ。
徐々に真相が明らかになるにつれて、受験者達の本性もわかってくる。
「果たして誰が合格するのか?」「質問とは何なのか?」という観客が一番知りたい謎の解答も十分に満足できる。
だが、ちょっと頭を使って観ていかないと、分かり辛いところがあるかもしれない。
『SAW(ただし1,2作目に限る)』『アンノウン』『アイデンティティー』などの密室サスペンス映画が好きな方には特にオススメ。
更に、今後就職活動を始める人なんかも、この映画を観ておけば、あるいは…………。
就職氷河期などと言われている現在の日本にこそ、相応しいっちゃあ相応しいかもしれない作品だ。
アンドリュー・ニコル監督のSFコメディ映画。
最新作『TIME』は当ブログの初記事にしたいくらいの傑作です。
この映画では、なんと「現実と区別がつかないほどのバーチャル女優(ヴァクトレス)を作成できる」プログラムが登場。
主人公の無名映画監督は、このプログラムにより架空の女優シモーヌを作り出し、長編映画を完成させ大ブレイク。
正体不明の美人女優シモーヌはマスコミや世間からも大注目を浴びるのだが、実在しないためプライベートが存在しない。
主人公は映画が大成功したのをいいことに、シモーヌは専属女優とし匿っているという嘘を吐いてしまう……。
最近では『ロボジー』などでも使われた展開である、「嘘のせいで後戻りできないところまで追い込まれてしまう」系の作品。
『シモーヌ』の面白いところは、主人公がシモーヌが実在すると人々に信じ込ませるために様々な手段を用いるところ。バレたらただじゃ済まないため、主人公の行動力も半端ない。
ホテルに宿泊した風に見せかけたり(勿論主人公と二人部屋の設定)、次回作の共演者と音声だけで会話させたり(勿論主人公のアテレコ)、テレビに映像で出演させたり(勿論主人公が予め作っておいたプログラム)などなど。
更には「監督の言うとおりにすれば素晴らしい作品になるわ」「役者は監督のためだけに動けばいいの」など主人公が訴えたいことをシモーヌに代弁させたりもする。このあたりが、設定を上手く活かしているポイント。
とにかく前半は主人公がシモーヌのアリバイ工作のために悪戦苦闘する展開が笑える。
しかし、中盤からはどことなくシリアスな雰囲気が漂い始める。主人公が、自分の取る行動と意志の矛盾に気がついたとき、一体シモーヌとの関係どうなってしまうのか――。
設定にこそリアリティは皆無だし、その技術はもっと別のところで活かせよとでも言いたくなるが、話はすこぶる面白いのでオススメ。
ラストの展開は連続した伏線の回収によって二転三転(!?)。
主人公は「実在しているように見せかけた」という嘘に、どう決着をつけるのか?
『七つまでは神のうち』
あらすじを紹介するのが結構めんどくさいホラー映画なんで、予告編で……;
意図的に犯人の顔が見えないような構図になっているのだが、そのせいで逆に観てる途中で犯人に目星がついてしまった。
すると、映画の構成におけるトリックも自然と見えてきてしまい、結果オチが想像通りに……。これさえわからなければきっと楽しく観れたんだろうなあ。
娘が行方不明になった夫婦、そして三人の若い女性(少女?)、彼女達の接点とは? そして神隠しの真相とは?
トリックは使い古されてるし、観てる途中で気づいたとしても中々面白い。
だけども、キャラクターの行動や様々な手段に疑問が残る。
「何故ここでそんな行動を取る?」「どうしてこうしないの?」「それって運に左右されすぎじゃない?」
と、観てる間に何度もそう思ってしまう。なんというか、話を進めるためだけに登場人物を動かしているようでイマイチ物語に乗れない。
それに後半、三人の女性にふりかかる悲劇は、どうも確実性に欠ける。そんな一か八かでいいのか?
というわけで、最後までキャラクターへの感情移入ができず、面白い話なのに引き込まれない展開の仕方などのマイナス面が目立つ。
全体的に、説明不足なのだ。劇中では登場人物の何人かが誘拐されるのだが、その方法については最後まで明かされない。あの妙な演出はなんだったんだよ!と言いたくなる。
設定や構成を、上手く料理できていない凡作ホラー。前述のシモーヌは、設定を物語と絡めた上手い使い方をしているのだが。
では、最後の『エグザム』は続きをぽちっと。
どちらかというと、一番書きたかったのは『エグザム』についてです笑
注:予告編の前に広告が出るのでスキップしちゃってください。
就活だ。
映画の舞台は、とある企業の就職試験の会場。最終試験まで残った8人の男女に用意されたのは、一つの入り口しかなく、窓もない密室。受験者以外には、警備員が一人。
この映画は、いわゆるワンシチュエーション系スリラーであり、ミステリー映画だ。
物語は、最初から最後までずっと部屋の中で進行する。
8人の男女が、上映時間をフルに使って何をするのかというと(予告編を観ればわかるのだが)問題を探すことだ。
配られた紙は、表面に受験番号が書いてある以外には何も記載がない。
試験官は「質問は1つ、求められる答も1つ」「試験時間は80分」「いかなる理由があっても、自分の紙を損なえば失格」「退場を選んだり警備員や監視カメラに話しかけても失格」
とだけ説明して去ってしまっている。
さて、ここから8人の受験者達が、その質問を見つけ出そうと悪戦苦闘。ルールの裏をかいて時に協力し、時に潰し合う受験者達は、いずれも頭の切れる者達ばかり。
密室系の映画では必須とされる「観ている側の考えそうなアイデア」の実践や「観ている側の考えもしなかった秀逸なアイデア」の見せ方も上手い。
それだけではなく、8人の中にはどうやら「企業側の人間」が紛れ込んでいるとか、観客には明かされていない映画の「世界観」「企業の正体」など複数の謎を絡めた、極めてエンタメ性に富んだ密室劇だ。
徐々に真相が明らかになるにつれて、受験者達の本性もわかってくる。
「果たして誰が合格するのか?」「質問とは何なのか?」という観客が一番知りたい謎の解答も十分に満足できる。
だが、ちょっと頭を使って観ていかないと、分かり辛いところがあるかもしれない。
『SAW(ただし1,2作目に限る)』『アンノウン』『アイデンティティー』などの密室サスペンス映画が好きな方には特にオススメ。
更に、今後就職活動を始める人なんかも、この映画を観ておけば、あるいは…………。
就職氷河期などと言われている現在の日本にこそ、相応しいっちゃあ相応しいかもしれない作品だ。
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